大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)3736号 判決

(争いのない事実)

一 控訴人が、本件実用新案権(昭和四一年六月一三日実用新案登録出願、昭和四七年一月二二日出願公告、同年九月二九日設定登録。以下、右実用新案登録出願に係る考案を「本件考案」という。)の権利者であつたこと、本件考案の明細書の実用新案登録請求の範囲の記載、本件考案の構成及び作用効果が控訴人主張のとおりであること、並びに被控訴人がイ号製品ないしハ号製品をその主張の期間製造販売したことは、本件当事者間に争いがないところである。

(イ号製品ないしハ号製品が本件実用新案権の技術的範囲に属するか否かについて)

二 前記当事者間に争いのない本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載、本件考案の構成及び作用効果に成立に争いのない甲第二四号証(本件実用新案公報)の考案の詳細な説明の項の記載及び図面を総合すると、本件考案は、名称を「カツター装置付きテープホルダー」とする、接着テープ類を切断するカツター装置を施したホルダーに関する考案であつて、控訴人主張のとおりの構成からなるもので、特に「操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着」するという構成を採用し、これにより、摘み9を回して幅截断用切刃7を回して引き出すテープを長手方向に沿つて截断するという効果を奏するものと認められる。右認定の事実によれば、本件考案は、「カツター装置付きテープホルダー」を構成要件(控訴人主張の構成要件A)とし、右にいう「テープ」とは接着テープ及びこれに類するものを意味するものと解されるところ、イ号製品及びロ号製品は乾式電子複写機及び専用オプシヨン装置であり、また、ハ号製品は乾式ジアゾ複写機であつて、本件考案に係るテープホルダーとは全く別個のものであるうえ、右各製品に装備されているロール紙(ロール感光紙)支持機構は、通常の技術的意味において、叙上説示の本件考案にいう「カツター装置付きテープホルダー」なる概念に含まれるものとは到底解することができないから、イ号製品ないしハ号製品のロール紙支持機構は、既にこの点において、本件考案の右構成要件を欠き、本件実用新案権の技術的範囲に属さないものというべきである。のみならず、本件考案は、前示のとおり、「操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着」すること、すなわち、テープを長手方向に沿つて截断するための幅截断用切刃7を可動刃4の緩挿軸8に固着することを構成要件(控訴人主張の構成要件C)としているところ、原判決添付第一目録及び第二目録の記載によれば、イ号製品及びロ号製品において、幅截断用カツター(本件考案の幅截断用切刃に相当する。)である上・下回転刃49、48は、いずれも長さ切断用カツター(本件考案の固定刃2、可動刃4に相当する。)を構成する固定刃21、回転刃22から離れた別個の軸に設置されており、また、原判決添付第三目録の記載によれば、ハ号製品においても、幅截断用カツター(本件考案の幅截断用切刃に相当する。)である上・下回転刃5、4はいずれも長さ切断用カツター(本件考案の固定刃2、可動刃4に相当する。)を構成する固定刃2、回転刃3とは別の軸に設置されていることが認められ、したがつて、イ号製品ないしハ号製品のロール紙支持機構は、いずれも本件考案の構成要件Cを欠くことは明らかであり、この点からも本件実用新案権の技術的範囲に属さないものといわざるを得ない。なお、控訴人は、イ号製品及びロ号製品においては、「専用オプシヨン装置におけるロール紙の最終排出口」と「複写機本体の下部に位置するフイード・ローラ20、長さ切断用の固定刃21及びこれと協働する回動自在に設けられた回転刃22」の二つの機構が一体となり、また、ハ号製品においては、「ロール感光紙の最終排出口」と「複写機の機体下部に位置するロール感光紙1、ロール感光紙の支持装置54、搬送ローラ対55、固定刃2及び回転刃3」の二つの機構が一体となつて、それぞれ本件考案の「カツター装置付きテープホルダー」(構成要件A)を構成している旨主張するが、前説示のとおり、イ号製品ないしハ号製品のロール紙(ロール感光紙)支持機構は、本件考案の「カツター装置付きテープホルダー」という構成要件を欠くものというべきであるのみならず、イ号製品ないしハ号製品のロール紙支持機構が本件考案の構成要件Cをも欠くこと前認定のとおりである以上、原告の右主張は採用するに由ない主張というほかはない。

(損害賠償請求権及び不当利得返還請求権の有無について)

三 控訴人の被控訴人に対する不法行為に基づく損害賠償請求及び当審における予備的請求である不当利得返還請求は、イ号製品ないしハ号製品のロール紙(ロール感光紙)支持機構が本件考案の技術的範囲に属することを前提とする請求であるところ、前認定のとおりイ号製品ないしハ号製品のロール紙(ロール感光紙)支持機構はいずれも本件考案の技術的範囲に属するものとはいえないから、いずれもその余の点を判断するまでもなく、理由がないものというべきである。

(結語)

四 以上のとおりであるから、控訴人の本訴主位的請求(不法行為に基づく損害賠償請求)を棄却した原判決は結局正当であり、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、当審において追加した予備的請求(不当利得返還請求)も理由がないから、これを棄却することとする。

〔編註その一〕本件の第一審判決は損害賠償請求を訴訟物とするものであつたので、時効を理由に本訴を棄却したが、本控訴事件において予備的請求として不当利益返還請求が主張された。本判旨はこの両者につき判断したものである。

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